技の話よりも
(道場のすみっこから # 40)
【2026年10月10日の記録】

先日、当道院の拳士が本部の特別昇格考試に挑み、見事に合格して帰ってきました。
もともとは6月に受験する予定でした。
しかし台風の影響で考試が中止となり、受験は9月へ延期となりました。
ようやく迎えた本番だっただけに、合格の報を聞いたときは私も本当に嬉しく思いました。
後日、道院で試験の様子を皆に話していただきました。
試験官はどんな先生だったのか。
相対になった拳士はどんな人だったのか。
学科試験はどうだったのか。
実技ではどんな技を行ったのか。
緊張した場面はなかったのか。
次から次へと話が出てきます。
正直に言えば、私もどんな技が出たのかは気になります。
けれど、皆の前でお話をお願いしたのは、それを聞きたかったからだけではありませんでした。
なぜ受験しようと思ったのか。
仕事や家庭との両立の中で、どのように準備を進めたのか。
受験直前で延期となった三か月を、どのような思いで過ごしたのか。
試験会場では何を感じ、帰りの道中では何を考えたのか。
そんな話です。
昔から武辺話というものがあります。
武勇伝ばかりではなく、その人がどんな思いで事に当たり、どんな苦労を重ね、時には失敗しながらも歩んできたのかを伝える話です。
今回聞かせていただいたお話も、私にはそんな武辺話のように思えました。
技や試験問題の内容は年月とともに変わっていくかもしれません。
けれど、不安を抱えながら挑戦したこと、思うように進まない状況と向き合ったこと、周囲の支えに感謝したことは、いつの時代も変わらないように思います。
今聞いていると何気ない話でも、いつか自分が同じような場面に立ったとき、ふと思い出すことがあるかもしれません。
だから私は、こうした報告の時間を大切にしたいと思っています。
合格という結果だけでなく、そこへ至るまでの道のりに触れられるからです。
今回のお話も、きっとその場で聞いていた誰かの心の中に静かに残り、いつか力になってくれるのではないかと思います。



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